
今、国会で審議されている「働き方改革関連法案」とは?
連日ニュースで見かける「働き方改革関連法案」を巡った与野党の攻防。
ところで、いったい「働き方改革関連法案」ってどんな法案なの?
まとめてみました。
働き方改革関連法案(はたらきかたかいかくほうあん)とは
「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案」、通称、「働き方改革関連法案」。
労働者がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現する働き方改革を総合的に推進するため、長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保等のための措置を講ずる。
としている。
働き方改革「関連」とつくだけに、実は8本の労働法の改正を審議している。
「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱」の要旨は、以下のとおりである。
1.働き方改革の総合的かつ継続的な推進(①雇用対策法の改正)
働き方改革に係る基本的考え方を明らかにするとともに、国は、改革を総合的かつ継続的に推進するための「基本方針」(閣議決定)を定めることとする。(雇用対策法)
2.長時間労働の是正と多様で柔軟な働き方の実現等
(1)労働時間に関する制度の見直し(②労働基準法、③労働安全衛生法)
・時間外労働の上限規制の導入
・フレックスタイム制の見直し
・長時間労働抑制策・年次有給休暇取得促進策
・特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)の創設
(2)勤務間インターバル制度の普及促進等(④労働時間等設定改善法)
・前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息の確保
(3)産業医・産業保健機能の強化(③労働安全衛生法・⑤じん肺法改正)
・産業医に対しその業務を適切に行うために必要な情報の提供など
3.雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保
(1)不合理な待遇差を解消するための規定の整備(⑥パートタイム労働法・⑦労働契約法改正)
・派遣先との均等・均衡待遇方式か労使協定方式かの選択義務化(⑧労働者派遣法の改正)
(2)労働者に対する待遇に関する説明義務の強化
・短時間労働者・有期雇用労働者・派遣労働者について、正規雇用労働者との待遇差の内容・理由等に関する説明を義務化
(3)行政による履行確保措置と裁判外紛争解決手続(行政ADR)の整備
・義務や説明義務について、行政による履行確保措置及び行政ADRを整備
この改正により、
・労働時間の短縮その他の労働条件の改善
・雇用形態又は就業形態の異なる労働者の間の均衡のとれた待遇の確保
・多様な就業形態の普及
・仕事と生活(育児、介護、治療)の両立
が、実現に向かうと考えられている。
参照:http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/dl/196-31.pdf
ところで、何をそんなに国会では揉めているのか?

この法案は、安部内閣の最重要法案の1つであり、2018年(平成30年)4月6日に国会に提出され、2018年6月現在も審議が続いている。
揉めている原因の1つに「高度プロフェッショナル制度」がある。
職務の範囲が明確で①一定の年収(少なくとも1,000万円以上)を有する労働者が、②高度の専門的知識を必要とする等の業務に従事する場合に、年間104日の休日を確実に取得させること等の健康確保措置を講じること、本人の同意や委員会の決議等を要件として、③労働時間、休日、深夜の割増賃金等の規定を適用除外とする。
という内容だが、
①一定の年収(少なくとも1,000万円以上)を有する労働者
労働者の平均給与の3倍くらいと言われているようだ。
②高度の専門的知識を必要とする等の業務に従事する場合
現在のところ該当する業務は、金融商品の開発、金融商品のディーリング、企業・市場等のアナリスト、事業についてのコンサルタント、研究開発などが挙げられているようだ。
③労働時間、休日、深夜の割増賃金等の規定を適用除外
残業代だけでなく休日労働や深夜労働の割増賃金も支払い対象外となる。
残業代だけでなく休日労働や深夜労働の割増賃金も支払われなくなることから、野党や過労死遺族から「過労死促進法」として非難が出た。
4月12日、希望の党と民進党は終業から始業の間に一定の休息時間を設ける「インターバル規制」導入を義務化し、政府が国会に提出した働き方改革関連法案の対案を提出。
5月15日、自民党は日本維新の会の求めに応じ働く人が後に高度プロフェッショナル制度を撤回できる制度を盛り込む一部修正を検討。
それにより、
「インターバル措置」、「1月又は3月の在社時間等の上限措置」、
「2週間連続の休日確保措置」、「臨時の健康診断」のいずれかの措置の実施を義務化(選択的措置)
という一文が加えられた。
つまり、野党側は高度プロフェッショナル制度が導入されることにより、「過労死を助長する」「残業代ゼロで働かせ放題になる」と反対しているのだ。
実際にはこの制度適用にはいくつか条件はがあるが、
大きな論点となっているのは、「労働者自身に働き方の裁量があるわけではない」という点だ。
自分で働き方、働く時間を決める権利がないのであれば、結局働かされすぎになるのではないかという懸念である。
アメリカ合衆国では、高度プロフェッショナル制度のモデルのホワイトカラーエグゼンプションが低賃金労働者まで拡大、長時間労働と健康被害の蔓延により規制強化に動いている。
日本もこの例に追随することを懸念する声も上がっている。
編集長より
私の本業はコンサルタントであるため、現状ではこの高度プロフェッショナルに該当している。
10年以上コンサルティング業務を行ってきたが、この10年間本当に寝る間も遊ぶ間も惜しんで働いてきた。
張や出勤のない土日はあったものの、パソコンを開かない(=仕事をしない)日は、一年で数日しかなかった。
ガムシャラに働いて成長したいという意欲が根底にあったからこそ、働き続けてはいたが、果たして休むという選択肢を現実的に取れたのかというと、YESとは言えない。
だからこそ、10年働いて、私の場合には、何かがプツっと切れたのだ。
そして、3か月の休暇に入った。
とはいえ、今となっては、なぜあのような働き方をしていたのだろうとも思う。
確かにあの時は「休む」という選択肢はなかったし、選べないと思っていた。
それは、「休む」ことによって目標(売上とか、もろもろ)が達成しないと思っていたからだ。
しかし、少し距離を置いてみて、冷静にあの時の働き方を見直してみると、
なんとも無駄なことをやっていたし、思考も停止していたと思う。
現在はコンサルティング業務は減らして、社内のマーケティングおよびデジタル化を進めているが、それはまさに成果で判断されるものだ。
逆に、毎日9:00-17:00で会社にいても、クビにはならないが、全く評価はされない。
そもそも自分自身で仕事を作り出す立場のため、何もしなければ仕事すら生まれない。
この仕事は、すごく頭を使う。
様々な人とミーティングもたくさんある。
そうなると私の頭は16時くらまでしか持たないのである。
なんなら集中力は60分から90分しか持たないので、リフレッシュが必要なのだ。
で、リフレッシュしたらまた呼吸するのを忘れてしまうぐらい?頭をフル回転させる。
だから、もうヘトヘトになる16時には本当は帰って、、、、なんなら集中が切れた時点で仕事を終えて帰宅したいのだ。
そして、またすっきり翌日に備えたいのである。
ところで、成果を評価される場合、やはり心配なのが、
「成果を出さないといけないので、働きすぎてしまう」
という点だろう。
それでいうと、私の勤めている会社は、クビはない。
最低限のお給料はいただける。
もちろん、今いただいているお給料はもらえなくなるが、成果が出せなかったのだから仕方ない。
もっというと、1年単位ではなく、2年、3年は猶予をもらえる。
担当する業務が変われば今までと同じ成果は出しづらくなるケースもある。
だからと言って、1年で同じ成果が出せないので、降給とはならない配慮がある。
だからこそ、安心して挑戦ができるのだなと、今回記事を書いていて思った。
いわゆるセーフティネットがあるのだ。
ところで、日本の中小企業全体に対して思うことは、
的確な目標設定(人事評価)ができるのであれば、この法案は導入したほうがよいと思う。
ただ時間を潰されるよりも、成果にコミットしてくれた方が業績が上がるからだ。
従業員も自分で成果を約束して(それに対するお給料も自分で決める)、それを果たせば自分の時間を自由に使えるのであれば、働き方だけでなく、生活、もっというと人生がより充実したものになると思う。
一方で、今の日本の中小企業でそれができる企業がどれだけあるのかは疑問だ。
適切な目標設定および給与設定ができなければ、企業側も従業員側も不幸な現実が待っているだろう。
もちろん、クリーンな企業でなければどんどん人材から選ばれなくなっているので、今後ブラック企業は淘汰されていくだろうが、一方でホワイトな企業であればこそ適切な評価方法を取り入れなければ経営状況に大きな影響を及ぼすことが予想される。
型にはまった評価制度にはならないだろうが、実現すれば、大きな可能性を秘めていることは間違いないと思う。
最後まで読んでくださってありがとうございました。
一部誤った記述などもあるかもしれません。
その際はご指摘いただけると幸いです^^
シェアさせていただきました。非常に共感できる内容でした。